▲ 白砂の別天地 – 日向山 (1,660m)

11月に計画した山行が雨で 温泉企画 にシフトしたため、「年内に登ってきたら?」との心温まる進言を得て、年の瀬一歩手前で今年最後、約半年振り の山行を実現出来る運びとなった。
12月ともなると陽が落ちるのも早いし、エリアによっては着雪や凍結といったリスクも出て来るので、まだ登ったことが無い山から候補を探すのも案外苦労する。
一時期のように月2のハイペースで登るなら「微妙な山でもとりあえず登っとけ!」というノリで行けるが、限られた機会を充実させようと思うと、それなりに熟考が必要になる。

ただ、今年からは車じゃないと選びづらい山も選択肢に加えられるようになったこともあり、今までは候補から外していた山も気兼ねなく選べるようになっているのが心強い。
そんなこんなで雪や凍結の心配が少なく、7月からのブランクを考慮して気軽に登れる山の中から、車じゃないと行きづらい山梨の日向山に登ることにした。

矢立石登山口

数日前の天気予報は「曇り時々晴れ」ぐらいだったのに、前日には「曇り」、そして「雨のち曇り」に悪化。11月も似たような流れだったので内心ゲンナリするところだが、これを逃すと次の機会が遠そうなので、最悪の場合は温泉巡りに切り替えることも視野に入れつつ、まずは山梨に向かうことにする。

自宅を4時に出て、5時に八王子駅前で友人をピックアップ。談合坂には一瞬だけ立ち寄ったけど、それ以外はノンストップで須玉ICまで直行。途中で結構雨脚が強まり、現地到着時点でもこの状況のままなら、山行は諦めようと話になっていた。

尾白川渓谷近くの山道から矢立石登山口までは、基本的に車の擦れ違いが難しいグネグネとした一本道。道路脇に落ち葉が堆積して側溝が見えづらくなっていたりもして、対向車に出くわすと結構面倒。
今回は時間帯が早く、オフシーズンで微妙な天気という条件が重なったため、事なきを得た。(一応、所々には待避所あり)

ナビ上に矢立石登山口が見えてきたところで、その少し前が封鎖されていた。貼り紙を読むと、どうやら3日前に冬季封鎖されてしまったらしい。
封鎖と言っても、目指す登山口からは100mぐらいしか離れておらず、ここまで来て引き返す理由は無い。幸い、到着した8時手前の時点でギリギリ雨具を使わずに歩ける程度の天候に落ち着いていたので、ゲート手前に車を停めて、ここから日向山に登ることにする。

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ゲートから半舗装の砂利道を歩いて、間も無くの駐車場。
鎖で区切られただけの簡易的なものだが、平坦に均されているので使い易そうだ。そこそこの台数を駐車出来るスペースがあり、ハイシーズンは満車になることも多いらしい。

駐車場のすぐ先に、日向山のハイキングコース入口がある。
この矢立石登山口から日向山へは2つのコースがあり、1つはこのハイキングコース。もう1つはしばらく渓谷に沿って尾白川林道の砂利道を進み、錦滝から直登するコースとなっている。
どちらも1時間半程度と比較的短いのだが、錦滝経由の急登は下りに使うのはお奨めしないとの情報が多く、現地の案内板でも「下山時には通行禁止」と書かれている。我々もそれに倣って、錦滝経由を上りに使い、ハイキングコースで下るプランを選択した。

尾白川林道 → 錦滝

ハイキングコース入口を通り過ぎて、通行止のゲートを抜けて尾白川林道を進む。
アップダウンがほとんど無く、平坦で歩き易い道なのだが、やはり封鎖されて数年経ち、落石や倒木といった荒廃が進んでいるようだ。
南側は尾白川渓谷なので比較的見晴らしが良さそうだが、この日は濃い霧の為、あまり展望は無い。

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登山口から40分で錦滝に到着。すぐ脇には東屋がある。
東屋は結構綺麗な状態で残っていて、ここからの急登に備えての準備に活用出来る。
錦滝は水量の乏しい地味な滝だが、水に手足を浸せるので、時季が良ければ気持ち良さそうだ。

錦滝からの急登

錦滝を離れて、いよいよここからが本番。
こちらの入口にも「ハイキングコース」などと緩いことが書かれているが、これは割と酷いフェイクである。最初から鎖・ロープ・ほとんどハシゴのような急階段が連続し、かなりのアスレチックコースだ。
封鎖中とは言え、最低限の保全はされているようで、鎖やロープにこれといった不安は無いが、自分がここまで登ってきた山の中でも、短い区間としてのキツさは指折りだと思う。ブランク明けの鈍った身体でいつもの感覚で登っていたら、あっと言う間に息が上がってしまった。
日向山は入門用の山として紹介されることも多いようだが、少なくともこちらのコースは性格が異なっている。

想像以上の急登にヒーヒー言いながら1時間ほど登ると、鞍掛山との分岐が現れる。
「山と高原地図」によれば、ここから鞍掛山の方に少し進んだ辺りに雁ヶ原があるように見えるのだが、実はこれもトラップで、実際には日向山に向かう途中が雁ヶ原である。(象徴的な白砂の山頂)
一度登れば分かるけど、紛らわしいことこの上ない。せめて引き出し線の1つも付けて欲しいところ。

雁ヶ原と日向山 山頂

分岐からヤセ尾根を少し進むと、突然視界が開けて、白砂の別世界が現れる。ここが雁ヶ原。
ここまでがスパルタな急登続きだったこともあり、この瞬間のカタルシスはかなりのもの。

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砂の傾斜を上りきり、ようやく山頂に到着。(三角点は少し離れた地味な木立の中)
晴れていれば甲斐駒ケ岳や 八ヶ岳 が一望出来る好展望のはずだが、この日は近くの山しか見えず。それでも何とかギリギリ雨は避けられたし、風も無く、寒さに凍えずに済んだだけでも有り難い。白砂と花崗岩の独特な風景は、天候を問わず十分に堪能することが出来るだろう。

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ハイキングコースで下山

帰りのバスや電車を気にする必要が無いので、比較的のんびりとした昼食を済ませ、今度は一般的なハイキングコースで下山する。
錦滝側から上ってきた場合、このハイキングコースへのアクセスが思いの外分かりづらい。案内板が無く、木立と笹ヤブに隠れた位置にあるため、気が付かないと砂の斜面をウロウロ下るハメになる。

雁ヶ原からハイキングコースに入ってすぐの位置に、ポツンと三等三角点。他には何も無いので、一応写真に収めてそのまま下山を開始。

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こちらのハイキングコースは低い笹原とスギ・ヒノキが延々と続く。急坂も岩場も危険な箇所も無く、とにかく歩き易いので確かに入門用として勧め易いのだが、ひたすら同じような景色が続くため、正直、結構ダレる。
難易度として入門用ではあるものの、上ること自体の楽しさを啓蒙するコースとしては、些か力不足。その分、山頂でのご褒美は他の追随を許さないのだが…

ちなみに往路では山頂まで誰とも出会わず、他に登山客が居るのか不明だったけど、こちらのコースでは3組ぐらいと擦れ違った。

みたまの湯

特に盛り上がりも無く、予定通りの時間に登山口に帰着。ゲート前には我々の他に車が2台。ここからの下りも対向車が来ないかビクつきながら、何とかそういった事態には遭遇せずに脱出完了。
再度須玉ICから高速に乗り、甲府南で下りて みたまの湯 に向かう。

みたまの湯は高台にある入浴施設で、露天風呂からは眼下に広がる甲府盆地を隔てて、八ヶ岳連峰などが見渡せる。この日は曇天のため、遠くの山々を眺めることは叶わなかったが、それでも開放的な温泉を堪能出来た。湯温は若干温めで、長湯に向いている。
同じようなロケーションとして贔屓にしている 天空の湯 があるが、個人的には天空の湯の方が好みだが、みたまの湯ではまだベストな条件で展望を得られていないので、最終的な評価はもう少し待ちたいと思う。

らーめん次郎冠者

夕飯のラーメンは最初から決めていたのだが、都内に戻ってからにするか、近場で探すかは少し悩んだ。みたまの湯を出た時点で14時半。調べた限り、目ぼしいラーメン屋は大体14時半か15時で中休みに入ってしまう。
しつこく粘って検索し、何とか中休み無しで営業している らーめん次郎冠者 なる店を発見。名前から想像出来る通り、山帰りの我々に相応しい「二郎系」のラーメン屋である。

満腹になると眠くなりそうだったので、ギリギリで理性を保って大盛は控えたはずだったのに、席に着いてトッピングをオーダーする際にまさかの「野菜マシマシ」を強行。
メニューを見ると、野菜マシマシは750gとか書いてあって若干怯む。まぁ、いくら量が多いと言っても、大半はもやしだから大丈夫だろう。

本日二度目の、多分一度目よりも高い山に挑み、何とか完食。足腰よりは、胃袋の方がブランクを感じなかったかな。


天気が微妙なオフシーズンということもあり、帰りの高速も渋滞と無縁でスイスイ快適。
八王子で友人を下ろして以降はさすがにグダグダになりつつ、何とか睡魔を躱して自宅に帰り着いた。
さすがにもう真っ暗だったけど、時間的にはまだまだ余裕の18時半。やはり公共交通機関よりも早めに始動出来る分、時間配分にゆとりを持てるのは冬場における大きなメリットだ。

快晴とはいかなかったものの、無事に山納めも出来た。
やはり登っていないと目に見えて山体力が落ちているので、日頃の運動不足解消を考えつつ、来春の山初めに向けてしっかり備えておくようにしたい。

DATA

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