▲ 予期せぬ落とし穴 – 本社ヶ丸・鶴ヶ鳥屋山 (1,631m)

あまりメジャーな山ではないが、どちらも中央本線沿線にある山梨県の山。本社ヶ丸は 山梨百名山 の1つで、位置的には夏に登った 三ツ峠山 や去年登った 高川山 の近く。
2日前まで雨の予報だったけど、前日に晴れのち曇りに変わったので登ってきた。

JR 笹子駅

出発の時点では完全な曇天模様で、予報前半の晴れの気配は感じられない。
今回のルートは駅からスタートして駅に下りるので、時間の自由が利くのがポイント。
中央本線の笹子駅に8時着、まずは1時間強の車道とダート歩きから始まる。この車道歩きは正直あまり見るべきものが無く、トンネルが1つと変電所があるぐらい。

砂利道が終わるとようやく登山口。登山者ノートに記帳して早速スタート。カラマツが茂る狭い山道をひたすら登る。狭い上に枝葉が低く茂っているため、想像よりも歩き難く消耗が早い。
明確な休憩ポイントは途中のベンチ1つしか無く、展望が得られるポイントもあまり無い。駅からの車道歩きを含め、ここまではかなり地味な道程と言える。

清八山

駅を出発して2時間強、唐突に現れる岩場を登ると、ようやくのビューポイントとなる清八 (せいはち) 山に到着。
当日の曇天でほとんど期待していなかったが、我々が到着した直後に一瞬だけ雲が取れ、遠くに富士山を見ることが出来た。5分も経つとまた雲に覆われてしまい、この日再び姿を見せることは無かったので、一瞬だけでも見ることが出来て、非常に運が良かった。
抜群に天気が良いと、甲斐駒ヶ岳や北アルプスなども見えるらしい。

本社ヶ丸

清八山から雑木林と岩場の小ピークを幾つか越えて、30分弱で本社ヶ丸に到着。駅からここまでの時間を確認すると、参考タイムより1時間早い到着だった。

空はうっすらと青みがかってきたものの、やはり富士山は隠れたまま。
こちらの山頂も晴れていればなかなか景色が良さそうだが、個人的には先の清八山山頂の岩場の方がダイナミックな景色で好みだ。

山頂はあまり広くないが、我々しか居ないので自由に腰を下ろして昼食にする。この時間帯は風も無く、晴れとまでは行かないまでも、適度に日が差して快適。
食事が終わる頃に5人ぐらいの高齢のグループがやって来たので、場所を譲る形で我々は次の目的地である鶴ヶ鳥屋山に向けて出発。

角研山

言われなければピークだと気付かないぐらい慎ましい角研山を通過。
本社ヶ丸以降は道幅もそこそこ広くなり、送電線の鉄塔やウインチの残骸を見つつ歩く。
看板では鶴ヶ鳥屋山まで150分と書かれていたので、それなりの長丁場を想像していたが、思ったよりもすんなり、2時間ジャストで到着。

鶴ヶ鳥屋山

鶴ヶ鳥屋山の山頂は、本社ヶ丸とは打って変わって木に覆われた静かな山頂。展望は無いが、広々としていて腰を下ろすには丁度良いので、コーヒーを淹れて小休止。
本社ヶ丸以降は立ち枯れしたブナにキノコがびっしりという場面が多いなと思っていたら、山頂の看板にはキノコが供えられていた。

道迷い

我々は大抵、不測の事態への対処も兼ねて休憩時間を多めに設定しておき、実際にはそれよりも短い時間で出発することで余裕を持たせているのだが、今回は鶴ヶ鳥屋山を出発する時点で予定より2時間早かった。
すんなり行き過ぎてちょっと食い足りないかなと思っていたら、実はここからがこの日の本番。

ここまでは全体的に案内板なども整備されて道迷いの心配は無かったのに、鶴ヶ鳥屋山以降はところどころでそれが消失していたり、目印があっても微妙に信憑性に欠けていたりする箇所があった。
道自体も道と言えば道のような、ただの踏み跡のような、怪しげなところが多く、滑り易い急斜面が続く中では、少し間違えた場合でもリカバーはかなり困難。

地図上で一旦車道に出ると書かれていたので、目印を見失いつつも車道を目指していたら、車道は見付けたものの、落石防止の為にコンクリで固めた斜面に行き当たってしまった。
落石を受け止める金網がぐるりと張られていて越えられず、金網の途切れた箇所を見付けたので、コンクリを滑り降りることが可能か確かめようとしたのだが、登山靴がコンクリ部分に全くグリップせず、ブレーキが利かないので危険と判断して断念。

目印を確認出来た地点まで登り直して戻ろうとしたら、足場がザラザラと崩れ始めて、身体がコンクリの斜面に投げ出されてしまった。靴はほとんどグリップしないので、足の力で這い上がることが出来ず、咄嗟に掴んだ細い枝だけが頼り。
しかし、その枝も身体を固定することは出来ても、そこから這い上がるために力を掛けると、ミシミシと音がして折れそうな頼りない強度で、この時はここ数年の登山経験の中で、初めて怪我をするかもしれないと覚悟した。

結局、細い枝を幾つか経由して太い幹に辿り着けたので、間一髪で無傷の生還。その後も崩れまくる斜面を何とかよじ登りつつ、見失った目印を探して1時間近くロスしてしまった。
2時間のプールがあったのでそれ自体は致命傷とならずに済んだが、時間ギリギリのスケジュールだったら日が暮れてしまう可能性もあるだけに、余裕を持った計画を立てることの重要性を再認識することになった。

ちなみに道を誤った直接の要員は、急斜面を下りる最中に目印を消失したからで、復帰後に正しいルートを捜索し直した結果、不明瞭な道の先に白いテープを発見した。
それまでは赤いスプレーかピンクのテープが目印になっていたのだが、何故ここだけ唐突に白く、しかも細い幹にピタッと巻かれたテープになっているのかは不明。
その後も先の失敗からかなり用心深くなっていたにも関わらず、ルートが不明瞭となる箇所が度々あった。


これまた分かり難い登山口を出ると、しばらくの砂利道歩きを経て初狩駅に到着。最終的に当初の参考タイムからは1時間早く下山。前半の貯金が活きた格好だ。
下の写真はリニアモーターカーの実験線。すぐ下に墓場があるという、不思議な構図である。

この辺りは案内板などの設置がしっかりされている山が多く、今回はその延長という感覚で少し油断があったことは否めない。
山自体に特筆すべき点は無かったけど、大きな代償を払わずに重要な体験をすることが出来て、個人的には非常に有意義な山行となった。