一年越しの再訪 – 養老渓谷

小沢又の滝

これまでは時間の都合もあって、大体途中で折り返していたのだけど、今回は4時間という余裕があるので、ここから小沢又の滝方面に向かう。
茶屋の隅に展望スペースが設置され、そこから滝を見下ろす形になっているのだが、この時点でもう100円分の元が取れると確信した。
ここまでの滝は、どちらかと言うと穏やかなものが多かったのだが、小沢又の滝は所謂 “滝らしい滝” であり、落差も勢いもそれなりのものだ。

急斜面に設置された若干頼りない階段を伝って下りると、3つの滝に囲まれた渓谷になっている。大小合わせると全部で5つの滝で構成されているらしい。

道に設置された矢印に沿って進むと、メインの滝の上に出られるようになっていて、ここからの眺めがなかなかに素晴らしいのだが、残念ながら上を通過する道は通行止め。
近くに落ち葉を清掃している方が居たので、また通れるようになるのか訊いてみると、この辺り (1,500坪) を1人で管理しているため、人手が足りず、今のところ未定とのこと。

単純に観て損は無いと思うので、粟又の滝に行く際には是非ともセットで回って欲しいスポットである。

滝見苑

その後は水月寺の敷地を通って車道に出て、20分程でスタート地点のバス停に戻る。この頃になると、青空の中に夏のような厚ぼったい雲が混じるようになってきた。
帰りのバスまで丁度1時間あるので、予定通りバス停前の 滝見苑 で温泉に入る。バスタオルとフェイスタオル付で1,200円。質素な印象の外観に反して、中は非常に綺麗。

エレベーターで3階に上がり、渡り廊下を通って別棟の浴場に向かう。
やはり温泉に入る余裕があるスケジュールで来ている立寄客は少ないようで、先客は誰も居らず、自分の後にも上がる直前に2人入ってきただけだった。
館内同様、浴場もとても綺麗に保たれており、アメニティも充実。露天風呂は小さいながらも解放感があるし、これはなかなかの当たりだ。次に来るときはもう1軒の方に行ってみようと思うが、バス停の目の前と言う利便性も含めて、基本的にここで十分満足出来る。


温泉から上がってバスを待っていると、バス停前の店 (一応、営業している?) の裏から猫がやって来るのが見えた。昔来た時にも似たような猫を見掛けていて、これは店の前に来るだろうとカメラを構えていると、こちらを気にすることも無くひょっこり姿を見せ、目の前を素通りして店の入口へ。
店の中に入るつもりのようだが、入口の引き戸は3~4センチしか開いておらず、通れない。ちょっと顔をグリグリ押し付けてダメだと諦め、「ニャー」と一鳴きすると戸が開いた。
帰宅後に数年前の写真を見返したところ、今日見た猫とは違っているようなのだが、雰囲気が似ているので、飼い主が好きな系統か、もしくは血縁なのかもしれない。

いすみ鉄道

14時半のバスに乗り、15分で上総中野駅に到着。やはりどうしても、景観とマッチしないトイレが残念の一言に尽きる。
この日は駅前で小さなイベントが催されており、過去2回よりも大勢の人で賑わっていた。いすみ鉄道に存廃問題が持ち上がった2008年以降、地道に経営努力を続けてきた成果として、今の状況があるのだろう。

往路のいすみ鐵道は素朴なままの手付かずのローカル線といった風情、復路のいすみ鉄道は車両を新しくしたり、マスコットキャラクターにムーミンを取り入れたり、ローカル線の姿としては対照的な印象。
東京方面からのアクセスを考えると、いすみ鉄道は遠回りする形になってしまうため、小湊鐵道で往復する方が単純にお手軽な状況にある。
いすみ鉄道は小湊鐵道と同じスタンスでは立ち行かなくなってしまうので、あの手この手で必死に集客を図ってきたことは、サイトを見ても窺い知れる。

ただ、そうすることによってローカル線ならではの雰囲気は薄れてしまい、現に自分も、どちらかと言えば昔ながらの小湊鐵道の方が好ましく感じていたりする。
これは難しい問題で、数年に一度訪れる程度の人間がとやかく言える話ではないし、そのまま続けているだけでは廃線になるところだった経緯を考えれば、いすみ鉄道の現状は前向きに受け入れるべきものなのだろうと思う。


15時過ぎのいすみ鉄道に乗って、1時間弱で大原駅へ。
この間に空模様が一気に怪しくなり、一時的にそこそこの雨が降った。丁度電車で移動しているタイミングだったため、とりあえず濡れネズミは回避。1~2時間ズレていたらアウトだったので、ギリギリ助かった。
沿線の菜の花が暗く沈んでしまって少し残念だったけど、小湊鐵道の方でしっかり見ることが出来ていたので、まぁいいかなと。

大原で外房線に乗り換えて千葉、総武線で東京、中央線で吉祥寺。特急を使わない場合でも、大原から大体3時間半で家に戻ることが出来る。
山が少ないので、今回のパターン以外で来る機会はほとんど無いんだけど、アクセスに関しては山梨方面に出るのとそう変わらないぐらいの感覚。小湊・いすみ共に運行本数の関係でタイムスケジュールが固定されるものの、その場合の乗り継ぎに時間のロスが無いので、安定感はバッチリ。

余談。
いすみ鉄道大原駅の改札には「ありがとうございました」と書かれていて、毎回何となく和んで、何となく写真に収めて帰っている。
2007年当時には既にあったので、多分かなり前から付いているものだと思うけど、こういう端々で感じるローカル線の雰囲気が好きだったりする。