▲ 久々のスパルタ単独行 – 檜洞丸 (1,601m)

GW以来ドタバタしていて、自分でも意外なぐらい山に登れない日が続き、気が付けば3ヶ月が経とうとしていた。精神的にはともかく、肉体的にはそろそろフラストレーションが限界値を迎えそう。今週末には八ヶ岳に登る予定なので、ちょっとは身体を慣らしておきたい。
候補となる山は2つあったが、天候が微妙なので丹沢の檜洞丸に登ることにした。

シロヤシオやトウゴクミツバツツジで有名なので、5~6月に混雑する山だが、公共交通機関によるアクセスが少し面倒なことと、全体的に展望がイマイチなせいか、それ以外の時季ではそこまで登山客も多くないようだ。
ブナが多く生えるため、晴れても山頂からの展望は望めないが、霧が発生する状況での神秘的な雰囲気を紹介されることが多い、特殊な性質を持つ。
ここ数日は天候が安定せず、快晴を期待出来ない状況が続いていたので、これを機会に前々から気になっていたこの山に登ることにした。

西丹沢自然教室

小田急線の新松田駅から西丹沢自然教室行のバスに乗って、終点の 西丹沢自然教室 まで69分。タイミングを図れば、自宅から電車の乗換1回で新松田まで行けるし、バスは終点まで乗るので、座ることが出来れば寝ていくことが可能。
昨年の春に登った大野山を左手に見つつ、8時半に到着。この日は月曜日だが会社がお盆休みだったので、電車もバスも座れて快適だった。

西丹沢自然教室で下車したのは、自分を含めて5人。全員男性だけど、この中では多分自分が一番若輩だろう。
この辺りは中川沿いに大規模キャンプ場があり、お盆休みのこの日は人で溢れていた。ちょっと人が多過ぎるのと、設備が整い過ぎている嫌いはあるが、小さい子連れで行くならなかなか良さそうなキャンプ場のようだ。

西丹沢自然教室は月曜が休館日なので、この日はトイレぐらいしか使えなかったが、週末であれば更衣室や交流スペース等が活用出来る。
入口に登山届が置かれているので、それだけ記入して出発。しばらくはキャンプ場を見下ろしながら、川沿いの道を歩く。

ツツジ新道

途中で今日歩く予定の「ツツジ新道」と、初心者コースとの分岐が出現。
初心者コースというのは地図やガイド本でも見たことが無く、多分沢沿いを歩いていくコースのようだが、現在は大雨の影響で通行止め。
どちらにしても情報を仕入れていないコースをその場で選択することは無いので、今回は予定通りツツジ新道で登る。

ツツジ新道の登山口は、パッと見でどこから登るか分かり難い。
先行していた2人組が往生していたので、横を通り抜けて沢から離れるコースを発見。沢から離れる際に少しだけ上りがあるものの、その後はしばらく傾斜の無い緩やかな道が続く。多少道が細くなっていたりして不安定なところはあるが、全体としては危なげのないコースだ。
ちなみに檜洞丸の山頂は1,601mで、登山口の標高は600m弱。前半楽に歩いている分、どこかで強烈な帳尻合わせが待っているということである。

最初から急坂が出て来るよりはマシなのだが、楽な内にある程度意識的に負荷を掛けて、キツい状態に合わせて身体をセッティングしておく必要がある。
個人的な経験上、一度出来てしまったペースを後から押し上げるのは、体力の消費が雲泥の差になるので、なるべく最初に高めのラインで設定しておきたい。

ゴーラ沢

ほとんど平坦な道のまま、35分でゴーラ沢出合に到着。
多分、初心者コースとはここで合流しているのだと思われるが、中ぐらいの岩がゴロゴロしており、増水時の危険性は一見して分かる。
この日はここまで曇りがちな空が続いていたが、このタイミングで少し陽が差した。
ツツジ新道全体を通しても貴重な視界が開けるポイントなので、沢のせせらぎと一緒に貴重な夏の日差しも堪能。


岩場を少し進むと、「展望台・檜洞丸」と書かれた看板と共に、コンクリ製の急階段が登場。ある程度覚悟はしていたけど、想像通りの急坂がスタートした。
ゴーラ沢出合の標高は800m弱なので、山頂まではあと800m強。危険な箇所があるというわけではないので、ゆっくり登りさえすれば特に問題無いのだが、この日は自身のリハビリを兼ねているため、無理の無い範囲で多少ペースアップしたい。

展望園地

ゴーラ沢から50分で展望園地と呼ばれる地点に出る。
晴れていれば近くに畦ヶ丸、遠くに富士山まで見渡せるらしいのだが、残念ながらこの日は苦しそうに頭を出している畦ヶ丸までが精一杯。
ゴーラ沢以降は上り一辺倒でほとんど休憩ポイントも無いような道だったので、景色が良ければここで多少ゆっくりしようかと思っていたが、取り止めて先を急ぐ。

展望園地以降も休憩ポイントが少ない、上るばかりの道が続く。
時々鉄梯子や鎖が出て来ることもあるが、ほとんど補助的なものなので、全体としては展望の無い斜面をひたすらダラダラと上っているような印象を受ける。傾斜自体は急坂と言うほどキツくはないけど、決して楽とも言い難い。
ちなみにこの辺りから徐々にブナが増え始める。

山頂手前の木道エリア

山頂手前30分ぐらいの場所から、登山道が植生保護のための木道が登場。この木道はガッシリしていて滑り難く、この頃から傾斜も穏やかになるので歩き易い。
時季が良ければバイケイソウとマルバダケブキが一面に広がるらしいのだが、夏の最中ではややぐったりとしたマルバダケブキが見られる程度である。

木道の出現と時を同じくして、辺りは霧とブナに囲まれた静謐な森に変わる。
この光景は写真で散々見ていたのだが、実際にその場に立ってみると、なるほどこれは “神秘的” の一言に尽きる。真夏だというのにひんやりと涼しい風が通り、半袖では薄ら寒いぐらいだ。

少し歩いて発電設備を横目に見つつ、山頂への最後の坂を上るタイミングで、何とも絶妙に一瞬だけ霧が晴れて青空が覗いた。この日の展望は諦めていたけど、この場所で空を見せてくれるなんて、最高の演出だ。