▲ 目指せ外輪山制覇 – 掃部ヶ岳~榛名富士 (1,449m)

お盆休みの1日を利用して、群馬県榛名湖の外輪山を回ってきた。
ここ数年の8月は八ヶ岳や富士山、尾瀬といった泊まりでの山行が多かったけど、今回は日程やメンバーの兼ね合いもあり、1人で日帰りプランを決行。

榛名湖は所謂 “カルデラ湖” で、周囲を山々に囲まれた地形となっている。
自分の出身地である苫小牧のすぐ近くに、三重式火山として一部に有名な 樽前山 があり、そのカルデラ湖として支笏湖がある。
榛名湖は湖底の特徴から「溺れたら助からない」と言われているらしい。支笏湖は塩分の低さから同じようなことが言われており、それがカルデラ故なのか分からないが、妙なところで共通項があって苦笑してしまう。
今回はその外輪山の中から、最高峰1,449mの掃部ヶ岳 (かもんがたけ) と、榛名湖の看板である榛名富士に登ることにした。

電車とバスを乗り継ぎ

榛名湖へは赤羽から高崎線、高崎からバスに乗り継ぐ。
高崎線が2時間弱、バスが1時間半とかなりの移動時間だが、どちらも座席の確保が容易で、終点で下車する形となっている。実際はほとんど寝ていれば良く、思ったより慌ただしくないスケジュールである。
それでも自宅を5時過ぎに出て、始発から間もない電車で都内を抜けつつ、到着は10時になってしまう以上、お世辞にも身近な山とは言えない。

榛名湖畔

予定通りに10時に榛名湖畔のバス停に到着。バスを降りたのは自分1人だった。
榛名湖は純然たる観光地なので、降りて早々に飲食店や土産物屋が立ち並んでいるし、ボート乗り場、馬車といったアミューズメントも非常に充実している。
湖の対岸には榛名富士の綺麗な山容が見えているが、右肩に無骨なケーブルカーの支柱を打ち据えられた様子は少々痛ましい。
天候は “晴れ” と言って差し支えないものの、季節柄水蒸気が多く発生するため、霞が掛かったような状態で抜け切らない、山水画のような景色になっている。

掃部ヶ岳・硯岩登山口

観光地の雰囲気を横目に楽しみつつ、湖畔に沿って西に進む。
30分弱で「榛名吾妻荘」の前を通り、その脇の「掃部ヶ岳・硯岩登山口」からスタート。ここまで他の登山客には出会っていない割に、登山道はよく整備されていて歩き易い。

この時季に小さな虫が多いのは低山の宿命で、掃部ヶ岳もその例に漏れない。
数年前の鷹ノ巣山や丹沢山を思い出して辟易しそうになったが、今回はそれほど羽音が煩かったり、しつこく付きまとう虫が居なかったので大分マシだ。

登山口から10分強で、掃部ヶ岳と硯岩への分岐が現れる。
硯岩へは分岐から5分と掛からないので、掃部ヶ岳を目指す人でも立ち寄るのが基本。これまでに比べると若干急坂となるが、距離が短いので大して疲れることはないだろう。

硯岩

硯岩からの眺望。スタート地点の「榛名吾妻荘」を眼下に据えつつ、榛名湖を一望。
登り始めてから30分も経っていないので、それほど高度を稼いだ実感は無いのだが、岩から見渡す風景はなかなかの高度感を伴っている。
観光ついでに登ることは止めておく方が無難だが、多少の装備があれば硯岩までは楽に登れるので、榛名湖に来るなら、硯岩までトライすることをオススメしたい。


硯岩から折り返して先程の分岐に戻り、今度は掃部ヶ岳を目指す。
分岐から間もなくして低い笹に覆われた道となり、そこを縫うように丸太の階段が設置されている。
最初は傾斜が緩く、階段の間隔も狭いのでそれほど気にならないのだが、徐々に勾配が上がり、丸太の前後が掘れて丸太の上にしか足を付けないような状態へと変わる。実際の時間としては15分程度のものなのに、やたら長く (倍ぐらいには) 感じられる。

掃部ヶ岳 山頂

分岐から30分弱、最後にプチ岩登りを経て掃部ヶ岳山頂に到着。山頂では大学生と思しき男女4人組が先客として昼食を広げていた。
硯岩で高齢のご夫婦、ソロの男性と2回擦れ違う以外に他の登山者と出会っていなかったので、やっと話が出来そうなグループだなと思ったりしたのだが…
このグループのノリが異様に軽い、いやむしろチャラくて、静かな山に来たのに全然落ち着かない。これがジェネレーションギャップというものだろうと自分を宥めようとしてみたものの、最早全然そんな生易しいもんじゃないのである。ぐぬぬ。

狭い山頂では距離を置くことも出来ず、諦めて近くの岩場に腰を下ろして昼食。
山頂の展望もなかなか良いけど、硯岩の方が数段ダイナミック。正午に近付くに連れて気温が上がり、比例してガスも濃くなりつつある。

黙々と昼食を済ませて撤収準備を進めていると、大学生グループが集合写真の段取りを始めた。「帰りは来た時より綺麗にして帰る」とか言ってるし、単に自分とはノリが違うだけっぽい。
自分が携行してるものと似たようなミニ三脚で撮るつもりのようだったので、「撮ろうか?」ってことで撮影を申し出て、逆にこちらも撮ってもらうことになった。でも、何故かこちらの写真には女性陣だけしか入っていないので、妙な具合に…
普段の生活では接点が無いだろうけど、山ではちょっとした切っ掛けで交流出来るのが楽しいですな。


掃部ヶ岳からは、更に西に進んで大きく弧を描くように下山するコース。
大学生グループも自分とほぼ同時に山頂を出発して、同じ方向に下山するらしい。こちらは1人で身軽なので、先行させてもらって笹だらけの道を下る。

どれぐらい笹だらけかと言うと、何歩か先の道が見えないぐらい。腰の高さぐらいの笹薮が青々と生い茂り、子供ならすっぽり埋まってしまうだろう。1~2歩先は辛うじて見えるんだけど、そこから先は「ヤブ漕ぎか?」と思うほどの状況。
歩いてみると、実際はちゃんとした道になっているので迷う心配はあまり無いんだけど、明け方や雨後のタイミングで歩いたりしたら、降水も無いのにビショ濡れという事態もあり得る。

耳岩

このコースは一応尾根っぽいので、笹だらけとは言っても、所々でビューポイントが現れる。山頂から15分ほど下ると笹も足首ぐらいの高さになり、はっきり見える道を歩けるようになった。
名前らしきものが見当たらない小さな岩場と、「耳岩」と書かれた大きな岩場からの景色は特筆モノ。鉄塔が若干残念だけど、岩場からだと視界の端に入る程度なので、それほど大きなマイナスではない。


そう言えば、山頂辺りから蝶とトンボの姿を多く見掛ける。特に蝶に関しては、今まで登ったどの山よりも多くの種類・数を見たように思う。トンボと同時季にこれほどの数を見た記憶が無いので、なかなか面白い光景だった。
夏場にしては、花の種類もなかなか豊富。

杏ヶ岳との鞍部

山頂から50分ぐらいで、杏ヶ岳 (すもんがたけ) との鞍部となる「杖の神ノ峠」に到着。結局、笹が濃い以外は足場も安定していたし、比較的歩き易い部類の下山ルートだった。
今回は杏ヶ岳には登らないので、南に折れて1時間弱の長い林道歩きとなる。
基本的に下山の林道歩きはダレるので、あまり長いと喜べない傾向にあるんだけど、このコースの林道は何となく大らかで雰囲気が良く、割と楽しんで歩くことが出来た。勾配らしい勾配もほとんど無いので、脚への負担は計算しなくて大丈夫。

そう言えば、掃部ヶ岳 (かもんがたけ) と杏ヶ岳 (すもんがたけ) はよく似た音ながら、あまり共通性の感じられない漢字を充てられている。前者は宮中行事に関する官位に「掃部頭」ってのがあるし、富士信仰と繋がっているような気もする。
後者は山頂が “李 (すもも)” に見えることから李ヶ嶽 (すももがたけ) と呼ばれていたものが、どういう経緯か “杏” に置き換わってしまったという話のようだ。山そのものに直接的な関連性は無いようなので、音を似せただけってのが真相かなぁ。

榛名富士

13時半に出発地点の榛名湖バス停に戻り、今度は反対の榛名富士を目指す。日中の日差しは強いけど、湖畔沿いの木陰道を歩く分には気にならない。
30分程歩くと、榛名山ロープウェイ の山麓駅に辿り着ける。

榛名富士はロープウェイで3分というお手軽さだが、さすがに山装備でロープウェイもアレなので、ここは意地を見せて (誰に?)、少し手前の登山口から登ってみることにする。
さすがに観光地化されている山だけあって、利用者の少ない登山道と言えども、それなりにしっかり整備されているようだが、展望はほとんど無い。展望が無いかわりにロープウェイも見えないので、途中で心を折られる心配も少ない、かも?

ロープウェイ 山頂駅

地味な道を黙々と登り、30分で山頂駅。
本当に所謂”観光地”なので、正直なところ、自力で登った感動みたいなものは皆無。
軽装の観光客に紛れて、1人重装備で駅から僅かに上った位置にある榛名山神社へ。
ビューポイントは山頂駅脇と神社前の展望デッキぐらいなんだけど、どちらも榛名湖側を向いていない。
硯岩をはじめとする掃部ヶ岳の岩上からの方が展望は抜群に良いので、それを確認出来たことが一番の成果だと言えそうだ。

ゆうすげ元湯

神社に上る階段の脇道から、ゆうすげ元湯方面への下山路に入る。誰かが「そっちは行き止まり」と言うような入口で、指導標が無ければ見過ごしてしまうかもしれない。
入口はそんなだけど、その先の道は普通に歩ける普通の道で一安心。ただ、やはり往路よりはマイナーなコースのようで、保全については若干甘くなっている。特に危ない箇所は無いので、難無く下山出来るだろう。こちらも展望は皆無。

榛名富士山頂から30分で「ゆうすげ元湯」に下山。名前の通り、入浴施設が幾つか集まった温泉地で、榛名湖バス停からは対岸に位置している。直線距離なら数キロで伊香保というロケーション。
どうせなら伊香保まで足を延ばしたい誘惑に駆られるが、そうすると帰りの交通費が嵩むので、今回は大人しく「ゆうすげ元湯」に浸かることにした。
榛名湖温泉 ゆうすげ元湯 は露天風呂が小さく、展望もそれほどではないが、入浴料が500円と手頃で、泉質も個人的に好みだったので割と満足。

施設の前からバスが出ていて、それに乗れば榛名湖バス停まで5分で戻れるのだが、1時間に1本程度の運行間隔なので、乗り継ぎには事前の計画が必要。
榛名湖バス停から16:40のバスに乗り、18:05に高崎駅着。18:35の高崎線から大宮で埼京線に乗り換えて20:30に渋谷着。榛名湖バス停と高崎駅で若干待ち時間が発生するが、忙しい乗換が無いので気楽。

とりあえず、今回で榛名湖外輪山の約1/3を歩いたので、機会があれば、季節を変えて残りの山々にも登ってみたいと思っている。

DATA

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