▲ 山と温泉の協奏曲 – 那須岳 1日目 (1,917m)

朝日岳 → 三本槍岳

ここからを先どうするかが、今回のポイント。
元々はこのまま三本槍岳まで登ってから三斗小屋温泉に向かうスケジュールを組んでいたのだが、三本槍岳を明日に回して、この日は三斗小屋温泉にさっさと向かうプランも用意してある。前者なら小屋到着は13時、後者なら11時頃になる。
この時点の空模様は雲がそれなりに多いものの、ここ2~3時間での急激な悪化は考えづらい。また、明日も天候は似たり寄ったりで悪化する可能性もあるため、今日の内に三本槍岳に向かうことにした。勿論、途中でも雲行きが怪しくなれば即座に引き返すのは言うまでも無い。

朝日の肩まで戻り、今度は北上。熊見曽根を過ぎて清水平までの尾根道が終わり、一転してハイマツの樹林帯を進む。北温泉分岐を越えると笹に覆われた狭い道が始まり、木道が敷かれた湿地帯を通過。
正面に聳える三本槍岳は名前から急峻を想像しがちだが、会津・那須・黒羽の3藩が領地確認のために槍を立てた故事に由来するそうで、実際には緩やかでどっしりとした山容だ。

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10時30分、三本槍岳に到着。標高は茶臼岳より2mだけ高い、那須岳最高の1,917m。山頂はかなり広く、大勢での大休止にも適している。
今のところ雨の心配は少なそうだが、雲が多くなりはじめ、既に遠くの山々を視界に収めることは出来ない。晴れていれば磐梯山や吾妻山、燧ケ岳や 以前登った日光白根山 等の錚々たる顔ぶれを拝めるようだ。
背負ってきた氷水でアイスコーヒーを堪能して、いよいよ三斗小屋温泉を目指す。

三本槍岳 → 三斗小屋温泉

来た道を戻り、熊見曽根から西に下りて三斗小屋温泉へ。
12時に隠居倉を通過して、ここからは山の斜面を伝い歩く地味なコースとなる。
展望は地味だが足場は細かな岩がゴロゴロ転がっていて、体力を消耗していると思わぬ怪我に繋がる。

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隠居倉から20分程下ると源泉地が現れ、目指す三斗小屋温泉は目と鼻の先。

今回のルートは東側から三斗小屋温泉にアクセスする形で、これはどちらかと言えば裏手に出る恰好。直前には温泉神社なるものがあり、あまり味気の無い適当な印象の外観だが、注目すべきは中に祀られた木彫りの社殿。
日光東照宮の造営に携わった彫刻師が、保養に来た際に製作したものと伝えられているとのことで、小さいながらも変態的 (誉め言葉) に精緻な彫刻は一見の価値がある。

三斗小屋温泉

12時半に三斗小屋温泉に到着。
三斗小屋温泉には 大黒屋 と 煙草屋旅館 という2軒の旅館があり、東側からは煙草屋の裏に繋がっている。どの登山口からでも2時間近く歩く必要があるが、かつては5軒もの旅館があったらしい。

煙草屋旅館

今回我々が宿泊するのは、煙草屋旅館。到着時点では我々の他に、ほぼ同刻に到着した客が1組だけ。我々の割り当ては3階 (最上階) 奥の “きすげ” という部屋で、元々4人の予約だったため、3人だとかなり余裕のある間取りである。
山小屋風ながらも一応ちゃんと旅館なので、個室が基本で寝具もしっかり用意されている。
山小屋として考えれば当然だが、部屋にコンセントは無いのでスマートフォン等の充電は出来ない。勿論、携帯の電波は通じないため、宿には衛星電話が設置されていた。

部屋は内側から施錠出来るが、外側からは施錠出来ない。(鍵を渡されない)
つまり、部屋を空ける際に鍵を閉められないということになるため、貴重品を置きっ放しには出来ない。旅館全体としてもロッカー等は設置されておらず、貴重品を携行出来る用意をしておくと安心だ。特に入浴中の管理が問題になるので、自分の場合はスマートフォンと財布を持ち込めるように、常に防水ポーチを持ち歩くようにしている。

露天風呂と内湯

露天風呂も内風呂も混浴だが、露天風呂は15~17時、内湯は18~19時が女性専用となっている。他にももう1つ女性専用の内湯がある。また、内湯は20時半までだが、露天風呂は朝6時半まで利用が可能。

しばらくすれば他の客も続々到着すると思われるので、混まない内に露天風呂に向かう。
写真で見て期待していた露天風呂ではあったけど、得てしてその手の写真が誇大気味なのは八丈島の みはらしの湯 でも痛感していたので、期待半分不安半分なのが正直なところ。
でも、ここの露天風呂は想像していたよりかなり広々としていて、下り坂の空模様で展望は完璧ではないながらも、期待通りの開放感に大満足だった。

露天風呂ばかりに気を取られて内湯はあまり下調べして来なかったのだが、内湯も内湯でなかなか見事。板張りの浴室と浴槽は綺麗に保たれていて、さすが温泉旅館といったところ。
タイミングを見計らい、貸切状態でゆったり浸かることに成功した。

夕食

部屋に戻ってビールで乾杯していると、銅鑼のような雷と、バケツを引っくり返したような豪雨が訪れた。時計を見ると14時過ぎ。今日のプランをコースタイム通りに歩いていたら、旅館への到着は15時手前。最後の30分はこの雷雨の中を歩かなければならなくなっていたし、とても露天風呂どころではない。コースタイムより2時間以上巻いていたことが功を奏した。
「賭けに勝った!」と思いながらも、他の登山客の無事を祈りつつ缶ビールで乾杯。そして、夕方まで泥のように眠る。

煙草屋は旅館とは言え、タイムスケジュールは基本的に山小屋なので、夕食は16時半。1階の大広間に集まり、お膳を並べてみんなでワイワイ楽しい宴。
献立としては山小屋に近い内容だけど、やっぱりクタクタになった身体で食べる食事は最高の御馳走だ。

大黒屋

雨が止んだので、まだ明るい内に隣の大黒屋を偵察。若干継ぎ接ぎっぽい建物の煙草屋に比べて、大黒屋は木造校舎のような佇まいが渋い。
露天風呂の魅力に抗えず煙草屋を選んだけど、思わず連泊を検討したくなるぐらい大黒屋も素敵。また来ることになったとしても、この2軒はかなり悩むだろうな…


翌日は3時起床の3時半出発で朝日岳に向かう予定だったけど、山頂で日の出を見るには間に合わないし、今日の工程で概ね満足出来ていたことから、露天風呂で夜明けを待つプランに変更。

21時の消灯まで、部屋でビールやチューハイを飲みつつ、持ち寄ったツマミとカードゲームで優雅に過ごす。缶ビールが500円、ワンカップと缶チューハイが400円、ペットボトルのお茶とポカリが300円、ペットボトルの水と各種缶ジュース類が200円。食べ物は売っていないので持参する必要がある。ちなみに缶チューハイはまさかの『ストロングゼロ (アルコール9%) 』一択。お酒に弱い人は要注意。

陽が落ちるとスーッと涼しくなり、若干暑いのでは?と思った布団も丁度良い塩梅に。
ああ、幸せだ…

2日目 に続きます。

DATA

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