俺たちの海へ 2008

友人から「何してんの?」と電話が掛かって来たのが23時過ぎ。この時間にこの口調の場合、大体良からぬことを考えている。
「会社の車があるから、今から伊豆行こう」、つまりはそういうことだ。我々の仲間内では年に1~2回、何故か大体唐突に発生するイベントである。

数年前にいつも入り浸っていた表参道のカフェで夜食を摂りつつ、1時間ほどまったり。
湘南の海岸で星を見つつコーヒーを啜り、だらだらと朝の伊豆に向かう。

北川で露天風呂に浸かりながら、ちょっと遅めの朝日を鑑賞。
今回は特にメインとなるイベントや場所があるわけでもないので、昼食まで大浜で時間を潰す。

とんかつ 一 (はじめ)

伊豆に関しては、車を出してくれた友人が詳しく、いつもコンダクターを務めてくれるのだが、その彼が幼少時に家族旅行でいつも来ていたトンカツ屋があると言い出した。本当は下田で寿司を食べたいところだけど、年末なので開けていない店も多い。
友人が言うには、そのトンカツ屋は結構な有名店で、しかも美味しくて有名なのではなく、圧倒的なボリュームと半強制的なお替り攻勢が有名なのだとか。
調べると月曜定休だったのだが、念の為電話で確認したら「潰れそうだからやってる」とのこと。友人も幼少時の記憶に恐怖して躊躇するものの、こうなると行かないわけにはいかない状況。

店に入ると、本来定休日である割には客が多かった。多分、あまり定休日とか意識されていないのだろう。
店の前にあるメニューを見て、何を注文するかあれこれ思案していたのだが、席に着くなり、「お客さん達、初めて? じゃあ、まずはミックスフライからだね」と、自動的に注文が確定されてしまった。一見さんはミックスフライ定食からスタートするらしい。
ミックスフライ定食はヒレカツ・メンチカツ・カニクリームコロッケ・鶏のから揚げという構成だが、「から揚げとホタテが選べるけど、3人居るから1人はホタテね」という理由で、俺だけホタテに変更された。そのままスグに味噌汁が置かれ、「お茶出ないから、代わりに味噌汁どんどん飲んで」
早速手を付けたかったが、この後のことを考えると、あまり先行して箸を進めるのも躊躇してしまう。

少しして、ミックスフライが目の前に置かれる。全て揚げ物なので、一見どれがどれなのかよく分からない。揚げ物だけでもかなりのボリュームの上、オプションで山盛りのナポリタンと大き目の千切りキャベツ。
そして、「ご飯にカレー掛けちゃっていいよね? 美味しくないんだけど、作っちゃってるからさ、あはは」という事後確認の元に、カレーが掛かったライスも到着。美味しくないって、自分で言っちゃうか。
というわけで、これで全品が揃い、いよいよ食事を開始。とりあえず、最後に出てきたカレーを一口。…び、微妙。…と云うか、むしろ○○○。

次はいよいよ肝心の揚げ物。
大量の揚げ物を食べる場合、その他のオプションをバランス良く挟むことが重要。時間を掛けると後々キツくなるので、どれがどれだか分からない揚げ物を次々と口に放り、キャベツとナポリタンを合間に食べる。揚げ物の味はなかなか。

全体的に1/3ほど消化した時点で、女将さんがキャベツ、親父さんがナポリタンを追加してくる。これ、一応の確認問答はあるものの、ほとんど自動的に皿に盛られ、しかも初期の量より多い。仮に断っても、「いいの? そう、じゃあ気持ちね」と言って、普通に皿に盛る。
どうやら、揚げ物が残っている内に他のものを減らしてしまうと、自動的に追加スイッチが押される仕組みらしい。これでは給食で習った食事の基本である三角食べが使えない…
3人並んでいる内の1人でも目を付けられたら、そのまま流れで残りの2人も追加されるシステムなので、この仕組みを理解していないと延々お替りの嵐に曝され続けることになるのである。
更に友人曰く、「席を離れると、戻って来る頃には元通りになっている」とのことで、基本的にトイレはNG。

途中からバランス良く食べることを諦め、マーキングである揚げ物を片付けることにする。
既に半分ほど平らげているカレーをテーブルに置くと、途端に「カレーお替り」と見なされてしまう為、以降は最後まで茶碗を持ち続けながら、続いてキャベツとナポリタンだけを食べる。
最後に、残ったカレーとお味噌汁を流し込んで何とか完食。店を出たあともスグには車に乗れず、裏の駐車場でしばらく休憩。


夜になって都内に戻り、いつもならここから夕飯を食べて解散になるところを、この日ばかりはどうにも出来ず、色々悩んだ挙句に何も食べずにそのまま解散。たった1食の影響をここまで引き摺るものかと痛感した1日となった。

ちなみにここまでを読むと酷い店と思われる向きもあるかもしれないが、決してそんなことはない。上記の内容はほとんど脚色をせずに書いているが、そういった1つ1つの出来事が自分にとって決してマイナスの評価にはなっていないことを付け加えておきたい。
お世辞にも万人向けではないし、正直自分の胃袋にも相当キツかったことは確か。でも、その無茶を乗り越えたからこそ得られたものがあったし、ここは紛う事無き名店だと思う。

いつの間にかとんかつ屋レポートになった感があるが、それだけのインパクトだったということで。

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