▲ 酷暑の丹沢主脈・主稜縦走 2日目 – 丹沢山・蛭ヶ岳・檜洞丸 (1,673m)

檜洞丸、青ヶ岳山荘

檜洞丸山頂手前の 青ヶ岳山荘 に到着。入口には「準備中」と札が掛けられているが、人の気配はせず、休憩中なのか不在なのかは不明。
ここまでの上りで水を大分消費したが、まだまだ余裕があったので、今回は焦らずに済んだ。もし水が残り少ない状態でこの状況に陥っていたら、困ったことになっていたかもしれない。

3年振り の檜洞丸山頂。この山頂は展望が無いので、記念撮影だけ済ませて、その先の北側斜面に向かう。

実はこの北側斜面こそが、今回の全行程の中で一番期待していたビューポイント。前回はガスが出ている日を選んで登ったために、この場所からの展望はゼロだったのだが、今回はすっかり快晴になっているので、素晴らしいものが期待出来そうだった。

これが観たかった、そして見せたかった展望。
惜しくも富士山は雲に隠れてしまったが、それを差し引いても抜群の大パノラマ。
この斜面はそこそこ傾斜があり、少し下りるとこの景色に身体を投げ出すような感覚を得られる。蛭ヶ岳前後の展望等も勿論素晴らしいのだが、この奥行きを含めた浮遊感はちょっと独特。

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ツツジ新道の下り

何時間でも留まりたいぐらいの場所だが、帰りのバス等も考えると、そうのんびりも出来ない。後ろ髪を引かれつつ、30分弱の休止を経て下山を開始する。
当初の予定では、ここから更にロングコースの犬越路経由で西丹沢自然教室に下りる計画だったが、この炎天下の中を犬越路経由で大回りするのは結構シンドイと思われるため、今回は少しでも早く沢に下りられるツツジ新道に切り替えることにした。

山頂から若干の緩やかな木道歩きの後は、ゴツゴツとした道を1時間半ひたすら下り続ける。
下るだけでも結構シンドイので、これが上りならさぞキツいだろうと思ったけど、そう言えば前回はこのルートで登ったんだった。人間、そういう都合の悪い記憶は忘れるものらしい。

1時間ほど下ると、下に流れるゴーラ沢の水音が聞こえるようになるが、逸る気持ちに反して、ここから実際に沢に出るまでも何気に長い。
それでも、沢に近付くに連れて気温が下がっていく実感はあるので、「あともう一息」と自分を鼓舞してノンストップでガンガン下る。

ゴーラ沢

待ちに待ったゴーラ沢に合流。水音で想像していたけど、どうやら先日の台風の影響でかなり増水しているようだ。
前回は岩場の合間を水が流れているぐらいの印象だったが、今回は川の合間にある岩場を探して対岸に渡る必要がありそうな状態になっている。

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合流直下のポイントはジャンプぐらいで何とか越えられたものの、その先にどうしても水に入らないと越せない箇所があったため、ひとまずその手前の日陰で荷物を下ろし、昼食を摂ってルートを探すことにする。

ゴーラ沢の水は綺麗で冷たく、足を浸していると今日の暑さが嘘のように涼しく感じられる。
食後もしばらく休憩して涼んだ後、意を決して靴を脱いだ状態での渡渉を敢行。浅い部分を選んでいけば濡れるのは膝ぐらいまでで済むが、流れはそれなりに早く、体勢を崩すと荷物ごと水に浸かる可能性もある。
素足だとさすがに足の裏が痛くて歩きづらかったけど、昨日まで履いていた靴下を履くことでほとんど解消出来た。

無事に渡り切ると、あとはダラダラと緩やかなアップダウンで登山口まで40分。

下山完了

ツツジ新道入口に到着。
入口の指導標に貼り紙があって、「台風で道が荒れているから、非常識登山は慎め」と書かれている。
「非常識登山は慎め」というのが、即ち「登るな」とまでは言い切っていないところがミソだが、言外にそう言っているようなものなので、これを見てなお進むには、それなりの覚悟が必要なはず。この日も檜洞丸山頂からここまでの間に、この貼り紙を読んだであろう十数人の登山客と擦れ違っている。
幾ら自己責任を謳ってみたところで、遭難すれば救助隊のお世話になるしかない現状があり、結局は他人にリスクを押し付けている趣味なのだということだけは、肝に銘じておかなければならない。

西丹沢自然教室バス停に到着。
つつじ新道に変更した甲斐もあって、予定より1便早い14時のバスに乗ることが出来た。

中川温泉 ぶなの湯

中川バス停で途中下車して、町営の ぶなの湯 に立ち寄る。
中川温泉は “信玄の隠し湯” として有名な温泉地だが、ここは町営なので、それほどの特色は無い。
帰りのバスは1時間に1本程度の間隔で運行されているけど、すぐの便だと行水になってしまうので、その次の16時手前の便にして、2日分の疲れをゆっくり癒すことにする。

ひとっ風呂浴びて脱衣所で服を着ていると、隣に何だか見覚えのある人が服を脱いでいる。よく見ると、何と弊社の社長その人。社長は丹沢周辺をちょくちょく登っており、今回我々が来ることを伝えていたので、合流するかどうかはさて置き、とりあえずこの辺りの沢沿いを歩きに来ていたらしい。
山行中も二度ほどメールのやり取りがあったけど、電波状況が悪くてまともに連絡が出来ておらず、ここで遭遇出来たのは完全にただの偶然だった。
車で来ているから、少し待てるなら松田駅まで乗せて下りてくれるとのことで、有り難く甘えることにして、社長が出て来るまで川辺に下りてビールで乾杯。


今回で丹沢のメインルートと呼べそうな区間を大体埋めることが出来たのが一番の収穫。
今まで表丹沢・奥丹沢・西丹沢と個別に登ったことはあったけど、それを繋いで踏破出来たことは個人的になかなか感慨深い。天候に不安を抱える中で、同行の2人に檜洞丸の大パノラマを共有することが出来たのも良かった。
第一子の誕生を控えて、自分の山行も一区切りとなるだけに、思い残すことが無い形でプラン通りに歩き切ることが出来たので大満足だ。

ちなみに下山後、幾らでも水が飲めてしまうという状態に陥っていた。
多分、家に帰るまでにちょこちょこと計4リットルぐらい水を飲んでいたはずだが、この日はトイレに行ってもチョロチョロとしか出るものが出ない有様。
実は今までの人生で日射病・熱射病という状態を自覚した経験が無かったんだけど、これは恐らくそのギリギリ一歩手前だったんじゃないかと思われる。意識的に普段より多めに水を口にしていたけど、この日の暑さには足りていなかったのかもしれない。
大事に至る前の段階で経験として蓄積出来て、本当に良かった。

しばらくは育児に追われる日々が続くと思うけど、頃合を見て、また手近な山から登り始めたいと思う。

DATA

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