何年か前にローカル線特集本を読んだら、実家の苫小牧からローカル線が出ていると書かれていた。苫小牧はローカルと言えばローカルであるものの、そこそこ人口の多いところでもあるし、さすがにローカル線が走るほどローカルだとは思っていなかったので少しショック。
苫小牧を始点として、襟裳岬手前の様似まで海岸線を3時間強の道程らしい。
その時はそれまでだったのだが、最近になってその路線を地図で追ってみたところ、小学校の頃にテニスの合宿があった静内へは、その路線に乗って行っていたようだった。
少し前まで関東圏のローカル線を回っていたこともあり、それなら今回の帰省で乗ってみようと思い、終点の様似駅周辺の情報を探っていたところ、駅から近いところにアポイ岳なるものがあると判明。
最初は実家の裏にある 樽前山 に登ろうと考えていたのだけど、今の時季はまだ雪が多く、山頂間近の登山口が使えないことから断念していたところだったので、正に渡りに船とばかりにアポイ岳に登れるか調査を開始。
いかにもアイヌ語っぽいこの山は、標高こそ810mと低いものの、特異な地質や地形が相まって高山植物の宝庫となっており、国の特別天然記念物および花の百名山に指定されている。
情報によると、花はGW頃から咲き始めるものもあるとのことなので、少しでも見ることが出来ればラッキーというものだ。
ビジターセンターに電話してみると、GWまでに雪が溶け切るか微妙とのことなので、念の為に軽アイゼンを荷物に加えて帰省した。
JR 日高本線 苫小牧 → 様似
当日の天候は快晴。朝8時に苫小牧発の電車に乗り、乗り換え無しで様似へ直行する。
小学生の頃に乗った時はもっとローカル線の雰囲気が色濃かった気がするけど、思ったより小綺麗な車両で快適な電車旅となった。
11時過ぎに様似駅。
駅前で少し待ってバスに乗り換え、10分程でアポイ岳山荘前に到着。
登山客を迎えるビジターセンターの他に、温泉施設、キャンプ場やゴーカートを備えた公園などが併設されているので、ローカル線に乗って辿り着いた山とは思えないぐらい整った登山口だった。
アポイ岳
12時、登山届に記帳して入山。
登山口には「熊出没注意」の看板が大きく掲げられている。
関東の山でもお馴染みのものだが、熊=ツキノワグマの関東と違い、北海道では熊=ヒグマであるからして、大きさも獰猛さもまるで違う。遭遇がそのまま死亡フラグに繋がる可能性も高いので、嫌でも身が引き締まる。
アポイ岳は天然記念物に指定され、更に王子製紙の保有林にもなっているだけあって、整備が行き届いており、案内板や熊除けの鐘などが随所に設置されている。道迷いの心配も全く無く、安心して登ることが出来る。
雨が降っていないのにぬかるんでいる箇所が多いのは、どうやら雪解け水のようだ。関東圏には無い樹木も色々あって、何気ない道でも目に楽しい。
大きなアップダウンも無く、1時間ほど緩々と歩いて5合目の休憩小屋に到着。
この時点の標高は400m弱と低いが、既に南側が海で拓けており、ここから上は早くも森林限界を迎えるため、どちらを向いても絶景だった。
馬の背
ここまでは緩やかで非常に歩き易い道だったのだが、休憩小屋を過ぎると様相が一変。
橄欖岩剥き出しの急斜面を30分ほど登って一気に標高を稼ぎ、馬の背と呼ばれる尾根に出る。身体的には今回の道程で一番シンドい箇所だが、絶景というニンジンが目の前に吊られているので、ヒーヒー言いながらも何とか登れてしまうのである。
馬の背からは天国のような尾根歩きが続く。スーパーマリオで蔦に登って雲の上に行ったかのようなご褒美っぷりで、とても1,000m以下の山とは思えない絶景が360度に広がっている。
道の両脇には高山植物を保護する為のロープが張られているので、これに沿って歩いて行けば道を誤る心配は無いだろう。
写真ではそこそこキツそうに見える箇所もあるけど、手を使わずにヒョイヒョイ登れるし、命の危険を感じるようなことは無い。ゴツゴツした岩場ではあるものの、大きな段差が無いので、小学生でも大丈夫そうだ。
山頂まであと20分というところで、遂に雪が出現。雨が降っていないのに登山道がぬかるんでいたことからも想像した通り、昨日今日の気温でかなり溶けて、雪に覆われているのは極一部。
傾斜はそこそこあるので、ちょっと気を抜くとスグに転倒しそうになるのだが、氷結している箇所は無いようなので、アイゼンは使わずに山頂に到達することが出来た。
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